知的障害児の中学卒業後の進路はどうなるのでしょうか。現在お子さんが中学校に通っていて、卒業後の進路について悩んでいる保護者の方、または小学生で早目に情報を集めたいと思っていらっしゃる方に、マルコが特別支援学校高等部の就業技術科に進学するまでの道のりをお話したいと思います。
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知的障害児の中学卒業後の進路
中学校の特別支援学級に在籍する子どもたちの進学先は、選択肢がたくさんあります。高校卒業の資格を取れる学校としては、チャレンジスクール、エンカレッジスクール、通信制高校に加え、最近ではインターネットと通信制の制度を活用したネット高校も増えています。知的に遅れがないけれど、コミュニケーションに問題があるような場合は、このように様々な形で学ぶことができます。
知的障害があるマルコにとって、普通高校への進学という選択肢はありませんでした。当時私が考えていた条件はふたつ。一つ目は、一人で通える範囲であること。二つ目は、将来の自立に向けて、本人が持つ能力を最大限に伸ばせる環境であるということでした。
将来の自立を見据えて、いま何が必要かを考える
将来の自立を見据えて、いま何が必要かを考えることは、障害の有無に関わらず重要です。特に知的障害を持つ子どもにとって、中学卒業後の学校選びはその後の人生に大きく影響します。なぜならば、高校卒業後には再び就労か進学かを選択することになり、大学に進学しない場合は、18歳で社会に出ることになるからです。三人の子どもを育てた私にとって、これは衝撃でした。我が家の上の子どもたちは、高校三年間部活に明け暮れ、大学入学後もバイトや旅行、海外留学と好きなことをして楽しく過ごしています。三人の中で一番幼いマルコが、三年後の18歳で社会に出ることは可哀想にも思えました。中学卒業の時点で、三年後の就労を見据えて進路選択をするのは、なかなか難しいことでしたが、いま思うと、選ぶ中で、将来子どもを自立させるんだという覚悟のようなものができたと思います。
障害の状態に合った学校選びが大切
障害の状態に合った学校選びが大切なのは言うまでもありませんが、具体的には進学先によってどのような違いがあるのでしょうか。公立の特別支援学校 高等部は、障害の状態によっておおまかに三つに分かれます。
・普通科(中度~重度)
・職能開発科(軽度)
・就業技術科(軽度~中程度)
普通科は、学区域が決まっていて、居住地によって通学する学校は決まります。事前に入学相談を行い、応募条件を確認し、願書を出せば試験による選考なく入学できます。より個別的な指導が必要な生徒を対象に、働く意欲や態度を育成し、企業就労を目指すとともに、中度から重度の生徒は、作業所等の利用に向け日常生活技能を育成することを目的に授業を行います。
一方、職能開発科と就業技術科は、一般就労、つまり企業への就労を目指した授業を行う学校で、入学には試験による選考があります。2021年2月時点で、都内に就業技術科は5校、職能開発科は4校あり、居住地に関わらず都内全域から自分に合った学校を選べます。
二つの違いは、実施する職業教育にあります。就業技術科は、『習得した知識と技能及び就労先での経験を基に、職責の範囲内で自ら判断し、職務を遂行で
きる能力を育成する』のに対し、職能開発科は、『就労先で求められる知識と技能を習得し、任された職務を正確に遂行できる能力を育成する』という目標の違いです。
マルコは、愛の手帳4度で軽度知的障害に該当するので、職能開発科と就業技術科を進学対象に学校を選ぶことにしました。
子どものありのままの姿を受け容れる
子どものありのままの姿を受け容れるというのは、簡単なようで難しいものです。しかし、進路選択をするためには、まず子どもの障害をありのままに受け容れることが大切だと思います。親が受容することで、子どもは自分自身を受容することができます。学校選びは、自分と子ども自身の見つめなおしの良い機会になります。子育てをしていると、先が見えない不安は常にありますが、一生懸命に子どもことを考え、選択した結果は、振り返った時に必ず1本の道筋になります。将来子どもが笑顔で毎日を過ごせるように、子どもの特性に合った選択ができるといいですね。